第一章

一、纏絲のように運勁することの実質的状況

  太極拳の運動はかならず繭糸を巻き取るように、もしくは引っ張りだすようにしなければならない。この二つの現象を言い換えると、勁を動かすときには螺旋を描くということである。同時に、このような螺旋はまた必ず弧を描かなければならない。例えて言うなら銃口より発射された銃弾が空中で回転しながら進むことによって螺旋運動を描き、同時に放物線上の軌道を描くことに似ている。太極拳の纏絲もこのような軌道を描かなければならない。

  勁を用いるときには必ず纏絲を用いる必要があることの意義は既に説明したが、実際の運動の中ではどうやって運用すれば良いのであろうか?かなり平易な言い方をすれば、一つが動けば全てが動く(一動全動)が成立している前提の基で、動作の時に手のひらが内側から外側へ翻す、もしくは外側から内側へ翻すときには図1のような太極図の軌道を描く(図1参照) (②所謂内側から外側へ或いは外側から内側へ翻すというのは、どちらも人差し指の返しを基準とする。

 図1の中で手が1から2に移行するとき、人差し指の動きは内側から外側へ翻ることにより順纏絲となり、2から3へ移行する動きのときには外から内に翻る逆纏絲となる。)。同時に、手のひらを内側から外側に翻す為には、上肢に関しては腕と肩を、下肢においてはくるぶしと足を、体幹部においては腰(ウエスト部分)と背骨をそれぞれ回転させなければならない(③脚の順逆の纏絲の区分は、膝の廻旋方向を基準とする。

 つまり、膝を股間の内側から前方外側に廻し斜め下へ纏絲、および股間の外側から後方内側へ廻し斜め上へ纏絲させるのは順纏絲である。また、膝を股間の外側から前方内側に廻し斜め上に纏絲させる、及び股間の内側から後方外側に廻し斜め下に向かって纏絲させることを逆纏絲とする。)。

 この三つが合わさることによって一本の根っこが足に形成され、ウエストが動くとそれにつれて手の指が空間に回転と曲線を描くのである。これは太極拳においては必ず達成しなければならない条件である。よって、拳譜の中では練習時において大きく開く動作であれ小さくまとまっだ動作であれ、“手のひらを翻し”“腕を旋回させる”太極勁から離れてはならないということが特に強調されており、これは地球が太陽の周りを弧を描いて周っており、同時に地球自身も自転しているのと同じである。つまり太極勁は平面の円ではなく、立体の螺旋の上昇なのである。

 
 図1
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